これからのWebサイトには必須!ウェブアクセシビリティの基本【概要編】
リモートワークにソーシャルディスタンス・・とオンラインでの情報提供の重要性がますます高くなった今日この頃、サービスサイト構築やサイトリニューアルのご相談が急増しています。
新しくサイトを作ったり既存サイトの見直しをするタイミングで、考えておきたいのが「ウェブアクセシビリティ」です。
「最近よく聞くけどどうすればいいの?」「ユーザビリティのこと?」等々、聞いたことはある、なんとなく分かるようでよく分からない・・というフワッとした方に、ざっくり説明します!
そもそも「ウェブアクセシビリティ」とは
「アクセシビリティ(accessibility)」自体は「近づきやすさ(場所、人)入手しやすさ(物)、アクセスしやすさ(交通)」といった意味です。
ウェブサイトにおけるアクセシビリティでは、「高齢者や障害者など心身の機能に制約のある人でも、年齢的・身体的条件に関わらず、ウェブで提供されている情報にアクセスし利用できること」というユーザー視点から始まりましたが、最近ではデバイスなどの利用環境や利用シーンなども踏まえた考え方になってきました。
日本のJIS X 8341-3の理解と普及を促進する組織の ウェブアクセシビリティ基盤委員会 では、「さまざまな利用者が、さまざまなデバイスを使い、さまざまな状況でウェブを使うようになった今、あらゆるウェブコンテンツにとって、ウェブアクセシビリティは必要不可欠な品質」と規定しています。
◆アクセシビリティとユーザビリティって?
アクセシビリティは、すべてのユーザーが情報に
「アクセスできる」=「目的を達成できる」
ユーザビリティは(主な)ユーザーが目的の情報に
「簡単にたどり着ける」=「使い勝手がいい」
ことを意味します。
まずは誰でも「使える」アクセシビリティがあり、さらに「使いやすい」ユーザビリティがある、ということですね。
アクセシビリティは国際規格で定められている
アクセシビリティに関する規定は、ウェブ技術の標準化団体「W3C」が1999年に「WCAG 1.0」、2008年に「WCAG 2.0」というガイドラインを発行しました。
この「WCAG 2.0」が2012年、国際標準化機構(ISO) にISO/IEC国際規格「ISO/IEC 40500:2012」として承認されました。
国内でも 日本産業規格(JIS)が2004年に独自の指針「JIS X 8341-3:2004」を公示、その後2010年に「WCAG 2.0」に合わせて「JIS X 8341-3:2010」として改訂。
さらに2016年、国際規格「ISO/IEC 40500:2012」に一致する規格「JIS X 8341-3:2016」として改訂されました。
つまり
ということです。
ちなみに「JIS X 8341-3:2016」の正式名称は「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」です。
※豆知識:「 8 3 4 1 」=「 や さ し い 」から付けられた番号。
JIS X 8341-3: 2016とは?
JIS X 8341-3: 2016では、ウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として、レベルA、レベルAA、レベルAAA という3つのレベルの達成基準が定められています。
これは上記のように国際規格と同じ基準で、特に欧米、オセアニアの主要国では、公的機関や交通機関など公共性の高い組織のウェブサイトはレベルAA、民間のウェブサイトではレベルAを、最低限達成すべき基準として勧告されています。
アメリカでは2017年以降、アクセシビリティに関する訴訟が急増しており、特に有名なのが2019年のドミノ・ピザ訴訟です。
視覚障害の男性がドミノ・ピザのメニューをウェブサイトで注文しようとしたところ、
『スクリーンリーダー(読み上げソフト)ではクーポンやトッピングのカスタマイズが利用できなかったのは合理的配慮を義務付けているADA法(障害を持つアメリカ人法)違反だ』とアクセシビリティが不十分であることを訴えました。
米最高裁はドミノピザは最高裁に対し、ウェブサイトのアクセシビリティ改善義務がある、としてドミノ・ピザの敗訴となりました。
海外ではすでに法規制が進んでいることから、国内でも主要な公的機関は
・目標とする適合レベル:JIS X8341-3:2016の適合レベルAAに準拠
・目標を達成する期限:2022年3月31日
として公表しています。
JIS X 8341-3: 2016の主な達成基準
ウェブアクセシビリティ基盤委員会では 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリストの例)を公開しています。
JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン(達成基準チェックリストの例)
一般的な企業のサイトでは、まずは「A」の基準達成を目指したいところですが、コンテンツやコスト、運用上の問題など完全に対応するのは困難なことから、総合的な情報を掲載するコーポレートサイトでは、ターゲットユーザーが広い会社案内やCSRといったコンテンツ単位で対応するケースが多いです。
「JIS X 8341-3:2016」への対応を公表する場合は、対応度合いによって下記の3段階に分かれています。
表記 | ウェブアクセシビリティ方針の提示又は公開 | 目標とする適合レベルの達成基準の試験結果 | 追加表記事項 |
---|---|---|---|
準拠 | 必須 | 試験を実施し、達成基準を全て満たしていることを確認 | なし |
一部準拠 | 必須 | 試験を実施し、達成基準の一部を満たしていることを確認 | 今後の対応方針 部分適合に関する記述(適用する場合) |
配慮 | 必須 | 試験の実施の有無、結果は問わない | 目標とした適合レベル又は参照した達成基準一覧 |
まとめ
ウェブアクセシビリティの世界的な傾向から、日本企業でもグローバルサイトや現地法人サイトなどはアクセシビリティ対応がますます重要になっています。
では実際に制作・開発するには?【実装編】については、ざっくりのはずの【概要編】が長くなったので、次回ご紹介します!